現代のビジネス環境は急速な変化を続けています。
固定的なキャリアプランでは、この激動の時代に適応するのは困難です。
そんな中で注目されるのが「プロティアンキャリア」です。
プロティアンキャリアとは、自己主導で柔軟にキャリアを変化させ、持続可能な成長を実現するアプローチです。
本記事では、その意味や特徴、具体的な取り組み方について解説します。

プロティアン認定ファシリテーターの私ヲシロが解説します!
【3分要点解説】現代版プロティアン・キャリア理論をわかりやすく


田中研之輔教授が現代版プロティアン・キャリア理論を提唱した理由
現代版プロティアンキャリア理論は、法政大学の田中研之輔教授によって提唱されました。田中教授は、現代社会においてキャリアのあり方が急速に変化しているのに伴い、個人が従来の「会社に依存したキャリア設計」から脱却する必要性を強調しています。この理論は、1976年にダグラス・T・ホール教授が提唱したプロティアンキャリア理論を基礎にしつつ、日本や現代の労働環境に適応した新しい形で再構築されています。
田中教授が現代版プロティアンキャリアを提唱した背景には、いくつかの重要な社会的な変化があります。AIやテクノロジーの進化による仕事の再編、非正規雇用の増加、そして複業やフリーランスといった柔軟な働き方の拡大は、個人がキャリア形成において「自ら舵を取る力」を求める時代を生み出しました。田中教授は、これらの変化に対応するためには、個人が「柔軟にキャリアを築き続ける力」を身につけることが不可欠であると説いています。
計画的偶発性理論のわかりやすいまとめ、伝え方
一言で言えば「自分の価値観を軸にしながら、環境の変化に柔軟に対応し、自らキャリアを作り上げていく考え方」です。この理論は、個人が主体的に行動しながらキャリアを築き、変化の多い社会において変革を遂げる過程で心理的な成功や満足感を追求することを重視しています。
ただし、この理論は「自由に気ままに生きる」ことを推奨しているわけではありません。むしろ、社会の変化や自分自身に対する理解を深め、行動を通じて可能性を広げることで、時代や環境に応じた柔軟なキャリア形成を目指すことを目標としています。
例えば、誰かに説明するなら、こう言えるでしょう。
「現代版プロティアンキャリア理論とは、変化の多い現代社会で、自分の価値観を中心に据えながらキャリアを柔軟に築く考え方です。たとえば、自分が何を大切にしているのかを理解し、それに基づいてスキルを学んだり、将来必要とされるスキルや経験を予測しながら新しい機会に挑戦することで、自分らしいキャリアを形作ることを目指します。結果として、組織に依存しないキャリアオーナーシップを習得し、目標に向けて努力する過程で、自分自身の成長や満足感を得ることができます。」
この理論の本質は、「個人が主体的にキャリア形成を進め、環境の変化に対応しながら自分らしい成功を追求する」点にあります。単に環境に流されるのではなく、柔軟に変化に対応しつつ、自分が望むキャリアをデザインする力が重視されています。



ここからはもう少し理論を詳しく解説していきます
プロティアンキャリアとは





プロティアンキャリアは1970年代にアメリカで提唱された歴史のある概念です
定義と由来
プロティアンキャリアは、1970年代にアメリカのキャリア理論学者ダグラス・ホール教授が提唱した概念です。
「プロティアン」の語源は、ギリシャ神話の海神プロテウスで、自由自在に姿を変えられることを意味します。
従来のキャリア形成が企業や組織に依存するのに対し、プロティアンキャリアは個人が自己主導で柔軟にキャリアを変化させることを重視します。
外部環境の変化に適応しつつ、自分の価値観や目標に合わせてキャリアをデザインするアプローチです。
従来のキャリア論との違い
従来のキャリア形成は、一つの企業や組織で昇進・昇格を重ねる一貫性が重視されていました。
しかし、プロティアンキャリアでは、自己主導性と価値指向性という2つの特徴が重要視されます。
自己主導性とは、他人に頼らず自分でキャリアをコントロールする力であり、価値指向性とは、自分の価値観や目標に基づいたキャリア形成を意味します。
これにより、変化の激しい時代でも柔軟にキャリアを築くことが可能になります。
プロティアンキャリアが求められる背景
プロティアンキャリアが注目される背景には、急速なテクノロジーの進化とグローバル化による職務の変化、労働市場の流動化、新しい働き方の台頭などが挙げられます。
AIや自動化の進展により多くの職種が変化し、リモートワークや副業といった柔軟な働き方も増加しています。
こうした環境では、従来のキャリアパスにとらわれず、自分の価値観やスキルを生かした柔軟なキャリア戦略が必要となるのです。
こういった時代背景への変化が求められる点は、クランボルツの提唱した計画的偶発性理論にも通じるものがあります。
現代版プロティアンキャリアとは





上記の概念をもとに田中研之輔教授が「現代版プロティアンキャリア」を提唱しました
田中研之輔教授の「現代版プロティアンキャリア」
田中研之輔教授は、ダグラス・ホール教授の「プロティアンキャリア理論」にリンダ・グラットン氏の『LIFE SHIFT』の考え方を融合させ、「現代版プロティアンキャリア」を提唱しました。
この現代版プロティアンキャリアの基本的な考え方には、ホール教授の「アイデンティティ」と「アダプタビリティ」が含まれていますが、それに加えてキャリアを「資本」として戦略的に蓄積するというアプローチが特徴です。
現代版プロティアンキャリアの特徴
現代版プロティアンキャリアでは、キャリアを単なる移動の履歴ではなく「資本の蓄積」ととらえています。
資本には次の3つの種類があり、それぞれを戦略的に積み上げることが重要とされています。
- ビジネス資本: スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴などの資本
- 社会関係資本: 職場、友人、地域などでの持続的なネットワークによる資本
- 経済資本: 金銭、資産、財産、株式、不動産などの経済的な資本
キャリア開発を「戦略的」にとらえることも、現代版プロティアンキャリアの特徴です。経営戦略や事業戦略と同様に、企業が社員一人ひとりのキャリアについても緻密な戦略を練るべきだとされています。
例えば、「社員にどんなキャリア資本を蓄積させ、今後のキャリアに転換させるのか」「どんなフィールド(部署や職種)を選択させるのか」について企業側が熟慮し、社員に対し助言すべきだと主張されています。
現代版プロティアンキャリアの3つのポイント





現代版プロティアンキャリアを活用するにあたって心得ておきたいポイントを解説します!
キャリアとは自ら形成するもの
現代版プロティアンキャリアにおいては、キャリアとは組織に預けるものではなく、自ら形成していくものとされています。
従来のキャリアパスにとらわれることなく、自分の価値観や目標に沿ったキャリアデザインが重要です。
いわゆる「キャリアオーナーシップ」を高める必要があると言えます。
自己主導でキャリアを構築することで、激動の時代にも柔軟に対応できるスキルとマインドセットが身につきます。
心理的達成や成功が重要
組織内での昇進や昇格ではなく、理想のキャリアを目指してアクションする過程で心理的達成を得ることを重要視しています。
自己満足感や自己実現を通じたキャリア形成は、仕事に対するモチベーションの維持と向上につながります。
自分がどのような価値を提供したいのか、どのような達成感を求めているのかを明確にし、それに沿ったキャリア戦略を練ることが大切です。
永遠のβ版として継続的にバージョンアップ
キャリアは、継続的な学習や振り返りを続けることで、何度もバージョンアップしていくものと捉えています。
新しいスキルや知識を習得することで、自分のキャリア資本を高め、ビジネスにおいて柔軟に対応できる力が養われます。
常に自己成長を意識して新たな知識を取り入れ続けることが、変化の激しい時代における成功の鍵となります。
3つの資産・3つの資本・6つの資本蓄積タイプ





キーワードをもとに現代版プロティアンキャリアの特徴をおさえましょう!
プロティアンキャリアの3つの資産
プロティアンキャリアの概念では、キャリアにおける資産は「生産性資産」「活力資産」「変身資産」の3つに分類されます。
- 生産性資産
長年培ってきたスキルや知識、上司からの評判などの社会的評価が含まれます。特に仕事に役立つスキルや知識は生産性を高め、収入やキャリアの向上に寄与します。自己成長や適切な環境で長く働くために、新たなスキルを常に学び続けることが重要です。 - 活力資産
心身の健康や家族・友人との良好な関係など、人生に幸福感をもたらし、仕事や生活への意欲を高める資産です。肉体的・精神的な健康を保ち、充実した人間関係を築くことが大切です。 - 変身資産
人生の変化に柔軟に対応し、自らを変える力のことです。急速に変化する現代社会において、自己変革の力は重要であり、新しいスキルを学び、環境に適応する姿勢が求められます。
これら3つの資産をバランスよく蓄積することが、キャリア資産の強化につながります。現状の資産を振り返り、今後どの資産を積極的に蓄積するかを考え、そのために必要な行動を起こしましょう。
プロティアンキャリアの3つの資本
プロティアンキャリアにおいて、キャリアの持続的な成長には3つの資本が重要とされています 。


- ビジネス資本(Business Capital)
スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴など、仕事に関連する資本です。 - 社会関係資本(Social Capital)
職場や友人、地域などで築いた持続的なネットワークを指します。 - 経済資本(Economic Capital)
金銭、資産、財産、株式、不動産などの経済的な資本です。
本業とのシナジーという観点では、ビジネス資本を念頭に、社会関係資本の一部も活かすことができるでしょう。
キャリア資本蓄積の6つのタイプ
プロティアンキャリアでは、キャリア資本を蓄積する6つのモデルが設定されています。
自分の理想像に一番近いタイプを把握した上で、副業と本業のシナジーの生み出し方を考えましょう 。


- イントラプレナー型(社内で蓄積する)
社内資源を活用しながらビジネス資本を高め、社内での機会を広げると同時に外部との交流を通じて社会関係資本を増やすキャリアの形です。 - トランスファー型(転職を前提とする)
企業で働きながらビジネス資本を形成し、あるタイミングで転職し、これまでの経験を活かしながら新たな職場で社会関係資本を増やすキャリアです。 - ハイブリッド型(副業を実践する)
企業で働きながら複数のビジネス資本を蓄積し、異なるビジネス資本を組み合わせることで独自の市場価値を生み出すキャリアです。 - プロフェッショナル型(専門性を高める)
1つの専門性を深めてビジネス資本を形成し、新たな知見をキャッチアップしながら専門性をさらに深化させるキャリアです。 - セルフエンプロイ型(起業する)
組織で培ったビジネス資本、社会関係資本、経済資本を活用して独立し、自分が得意な領域を形成するキャリアです。 - コネクター型(人と人をつなぐ)
社会関係資本を重視しながら、人と人をつないでビジネスを生み出したり、コミュニティを作ったりするキャリアです。
キャリアを維持しつつ資本を蓄積するハイブリッド型やイントラプレナー型に対し、転職や起業を前提とするのがトランスファー型とセルフエンプロイ型です。プロフェッショナル型やコネクター型は、就業形態にかかわらず資本を蓄積することが可能です。
すぐにトランスファー型やセルフエンプロイ型に移行できない場合は、ハイブリッド型やイントラプレナー型で資本を蓄積しつつ、戦略的に移行していくとよいでしょう。並行して、プロフェッショナル型やコネクター型も取り入れることで、資本の蓄積を効率的に進めることができます。
プロティアンの価値観は「成長」です。自分が成長するために、専門分野を深めるか、幅を広げるかを戦略的に考えながら、キャリア資本の蓄積手段を選びましょう。
プロティアンキャリアを支える心構え





現代版プロティアンキャリアを活用するにあたっての心構えを解説します!
変化を恐れない
プロティアンキャリアを実践する上で、変化を恐れない心構えが重要です。
キャリアの変化は成長の機会であり、失敗も学びの一環と捉えることが大切です。
失敗を恐れて挑戦を避けるのではなく、失敗から学び次のステップへ進むことで、自分のキャリアを自己主導で進める力が養われます。
柔軟なマインドセットを持ち、変化をポジティブに捉えることがプロティアンキャリアへの第一歩です。
自己決定の重要性
プロティアンキャリアでは、自分のキャリアは自分で決めるという自己決定が重要とされています。
他人の意見や環境に流されず、自分自身の価値観や目標に基づいてキャリアを選択する力が必要です。
自己決定の力を高めるためには、自分がどのようなことに興味があり、どのような目標を持っているのかを明確にすることが不可欠です。
そのためにも、自己分析や定期的な振り返りを行い、自分で足りない部分はキャリアカウンセリングやコーチングなどを活用して自分を深く知ることが重要です。
ネットワークを大切にする
コロナ禍以降、オンラインで接点を持つことが一般化しました。社会関係資本の構築に向けて、意識的に機会を作りましょう。
複数のコミュニティに属し、社外でのつながりを豊かにすることで、本業でのビジネスパフォーマンスも向上します。
- キャリア形成を客観的・相対的に捉えられる
社外のつながりを通じて、自分のキャリア形成を客観的・相対的に見ることができるようになります。自分の状況やポジションを再確認することで、今後のキャリア戦略を明確にできます。 - ビジネス資本の向上に取り組むようになる
社外のつながりを通じて、ビジネス資本の向上に取り組むようになります。新たなスキルや知識を共有したり学んだりすることで、自分のビジネススキルを磨くきっかけを得られます。
まとめ
プロティアンキャリアは、自らの価値観に基づいてキャリアを形成し、変化する時代に柔軟に適応するためのアプローチです。自己認識を深め、多様な経験を積みながら、信頼できるネットワークを築くことが重要です。
固定的なキャリアプランに縛られず、自分自身の成長を信じて変幻自在にキャリアを歩む処方箋として、ぜひプロティアンキャリアの考え方を取り入れてみてください。



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