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近年、SAP(S/4HANA)への移行をきっかけにした大規模なシステム障害が相次いで報じられています。江崎グリコの「プッチンプリン」出荷停止や、ユニ・チャームの紙おむつ納品遅延は、ニュースで目にした方も多いのではないでしょうか。
この記事では、SAPの障害がなぜ起きるのか、その理由を代表的な事例とともに整理し、さらにこうしたトラブルの多発がSAPフリーランス市場にどんな影響を与えるのかまで考えていきます。
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近年相次ぐSAP移行のシステム障害事例

まずは、報道されている代表的な事例を整理します。いずれも基幹システムのSAPへの刷新・移行に関連したトラブルとして伝えられているものです。
| 企業 | 時期 | 報じられている内容 |
|---|---|---|
| 江崎グリコ | 2024年4月 | S/4HANAへの切替後に障害。チルド食品が2カ月以上出荷停止。在庫データの不整合や受注処理の遅延が要因と報道 |
| ユニ・チャーム | 2024年5月 | 新基幹(S/4HANA)と物流システムのデータ連携不具合+連休明けの大量注文で処理が追いつかず、紙おむつなどの納品が遅延 |
| ノーリツ | 2000年ごろ | SAPのERP「R/3」を約4年かけて導入も、保守費やバージョンアップの追加コストが判明し稼働直後に廃棄。16億円の特別損失と報道 |
とくに江崎グリコのケースは規模が大きく、プロジェクトは2019年12月に2022年12月完了予定で始まったものの、納期は1年以上延び、予算は215億円から342億円へ膨らんだと報じられています。障害による業績への影響も大きく、2024年1〜6月期の純利益は前年同期比で約53%減となりました。なお、これらの責任の所在については見解が分かれる部分もあり、ここでは報道されている事実の範囲で整理しています。
SAPの障害はなぜ起きるのか—共通する6つの理由

これらの事例には、共通する原因のパターンがあると感じています。SAP導入プロジェクトの失敗要因として、専門家が繰り返し指摘しているのが次の6点です。
1. 要件定義が「現状の写し」になっている
現場の要望をそのまま書き写した「As-Is型」の要件定義になりがちな点が、よく指摘されます。今の業務をそのまま再現しようとすると要件がまとまらず、プロジェクトの長期化と品質低下を招きやすくなります。
2. アドオン・カスタマイズの作りすぎ
標準機能に業務を合わせるのではなく、業務にシステムを合わせようとして追加開発(アドオン)が膨れ上がると、コストとスケジュールが爆発しやすくなります。これは多くの失敗事例に共通する落とし穴です。

特にS/4HANAでは、ベストプラクティスへの適応、そのための業務標準化が必須になっています
3. プロジェクト管理(PMO)・ガバナンスの不備
全部門を巻き込む大規模プロジェクトでは、課題管理やリソース調整を担うPMO、経営判断を行うステアリングコミッティの機能が欠かせません。ここが弱いと、遅延やコスト超過、現場の混乱につながります。
4. 部門間の合意形成不足
営業・製造・会計など部門ごとの利害が衝突したまま進むと、後工程で必ず問題が噴出します。統合システムであるSAPだからこそ、部門横断の合意形成が品質を左右します。
5. ユーザー企業側のノウハウ空洞化
システムをベンダー任せにしてきた結果、発注側に判断できる人材がいない状態(CIO不在など)が、トラブルを深刻化させると指摘されています。コンサルとの能力差が埋まらないまま進むと、適切な意思決定が難しくなります。
6. データ連携と一斉切替(ビッグバン移行)のリスク
グリコ・ユニ・チャームの事例でも、物流など他システムとの「つなぎ」=データ連携の不具合が引き金になったと報じられています。旧システムから一斉に切り替えるビッグバン方式は、想定外の事象が起きたときの影響が大きくなりがちです。
障害は「SAPが悪い」のか—構造的に難しい理由


こうした事例を見ると「SAPだから危ない」と感じるかもしれませんが、私は少し違うと考えています。SAPは世界中で使われる標準的なERPであり、障害の多くはツールそのものよりも、要件定義・プロジェクト管理・移行設計といった進め方に起因していると報じられています。ベンダーだけの責任にもできず、発注側・推進側の双方に難しさがある、というのが実情に近いのだと思います。
そして、S/4HANAへの移行はECCとは構造が大きく異なるため、単純な入れ替えでは済みません。だからこそ、移行を安全に成功させること自体が高い専門性を要する仕事になっています。



SAPそのものの位置づけはSAPとは?世界シェアNo.1 ERPを5分で解説もご参照ください。
障害の多発がSAPフリーランス市場に与える影響


では、こうした障害の多発は、SAPフリーランスにとってどんな意味を持つのでしょうか。一見ネガティブな話に見えますが、市場という視点では需要を押し上げる方向に働くと考えています。理由は次のとおりです。
- 「止めない移行」を担える人材の価値が上がる:PMO・品質管理・テスト・データ移行といった、トラブルを防ぐ役割の重要性が再認識されています。
- 火消し・立て直し案件が増える:遅延・炎上したプロジェクトを建て直せる経験豊富な人材は、高単価で求められやすくなります。
- 上流(要件定義・移行設計)の需要が高まる:失敗の多くが上流に起因するため、ここを設計できる人材が重宝されます。
- 発注側の内製・伴走支援ニーズ:ノウハウが空洞化した企業を支える、伴走型のフリーランスの出番も増えています。
2027年問題でプロジェクトが乱立し、人手不足に拍車がかかっているなか、「ただ作る」人より「プロジェクトを止めずに完遂させる」人の価値が上がっている、という流れです。



フリーランス市場全体の動きはSAPフリーランスの将来性は?モジュール・職種別に2027年以降の需要を解説でも整理しています。
これからのSAPフリーランスに求められること


障害事例から学べるのは、これからのSAPフリーランスに求められるのが「技術力」だけではない、ということだと思います。要件を整理する力、関係者の合意を形成する力、移行を安全に設計する力——こうした上流・推進の力を持つ人ほど、トラブルが増える時代に選ばれやすくなります。
自分のスキルが今の市場でどう評価されるのかは、実際の案件に触れてみるのが一番わかりやすいと感じています。PMOや品質・移行支援など、どんな案件にどれくらいの単価がついているのかを知れば、次に磨くべき力も見えてきます。SAP案件に強いエージェントの特徴はSAP案件に強いフリーランスエージェントおすすめ一覧|15社を徹底比較で整理しているので、現在地を確かめる入り口として活用していただければと思います。
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